ヨットのレースを本格的に始めて3年になる。
学生時代ディンギーやウインドサーフィンを大学のクラブで慣れ親しんだはずであったが、20年以上のブランクは如何ともし難い壁があった。
何せ体が動かない、長年の不摂生で背筋も腹筋も鈍らで役に立たない状態であった。
おまけにクルーもアルコール漬けの同年輩の輩ばかりで、当初はセールトレーニングに出ても海上宴会モードに突入という具合であったが、広島で開催されている年間ポイントレースを経験するうちに勝ちたいという意識がクルーの間にも生まれ、今では中年体育会系のチームになってきた。
レースは年間10回ほどで、主に広島湾を中心に開催され、年間のポイントを争うシリーズとなっている。
1.5マイルほどの距離に設置されたブイを2~2.5往復するだけのレースではあるが、遊びとはいえ一度に30フィートから40フィートクラスのボートが10~20艇一度にスタートしせめぎ合いながら展開するレース中は8名のクルーたちの罵声と怒声で戦闘状態になっている。
強風時には緊張感と寒さで凍りつきそうな場面に出くわすこともあるが、8人のクルーワークの統制がとれベストの走りができたときは、ひとりひとりの満足が寄り集まり単純な足し算で得られる以上の楽しさが、船上に満ち溢れる。レースが終わり、瀬戸の島影に沈む夕日を見ながら友人たちと祝杯を傾け、帰途につくゆっくり流れるような時間が最高である。