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歯科における再生医療  原瀬忠広

歯科における再生医療   原瀬忠広

私たちの体は、 200種におよぶ細胞から構成されている。
しかし、 そのルーツをたどると 「受精卵」 というたった一つの
細胞に行き着く。 受精卵には幹細胞が含まれ、 あらゆる細胞に
分化する多分化能をもち、 自己複製を繰り返す。
一方、 細胞研究においては、 「成人には、 受精卵にみられる
ような多分化能と自己複製能をあわせもつ細胞はほとんどない」
との見解がなかば常識となっていた。
例外は、 骨髄中に存在する造血幹細胞くらいしかなかった。
造血幹細胞は赤血球、 T細胞、 好中球などの8種もの血液細胞が、
分化することが、 広く知られてきた。
ところが、 最近になって、 脳や筋肉、 肝臓、 消化管、
皮膚上皮といったさまざまな部位に、 幹細胞 (ES細胞) と
よべるものがあることがわかってきた。
これは、 骨髄移植が白血病などの治療に功を奏するように、
病気や事故によって失われたさまざまな生体機能が、 幹細胞に
よって再生される可能性を示唆するものとなった。
幹細胞を用いた日本の基礎研究の中には、 臨床にかなり近づいて
いるものもある。
ターゲット臓器は、 すい臓、 歯、 脳、 骨髄などで、 いずれの
研究も、 欧米に遜色のないトップレベルを走っている。
 再生医療は致死的な疾患を治す前にQOL型の医療として実用化
されていくのではないかと考えている。
歯科の分野においても歯周病の制御やインプラントのために再生
医療を使えないか取り組んでいる。 インプラント (人工歯根)
を行う場合、 下顎部に比べ骨の量が少ない上顎部のほうがより
困難で、 その成功率は、 フィクスチャー (支柱) をどれだけ
の長さで埋めるかで左右され、 10㎜以上では失敗率は13%程度
になる。
フィクスチャーの周囲にある骨の量を増やすことができれば解決
につながってくる。 そこで骨を作って上顎洞に移植する方法が
米国で開発された。
これまでは自家骨移植が行われ、 患者自身の体から
腸骨などを採取して移植する方法がとられてきた。
しかし組織工学の進歩により幹細胞と足場となるマトリックスを
組み合わせてさまざまな形の骨を再生する方法が考え出された。
自家骨移植では1グラムの骨から1グラムの骨しかできないが、
再生医療では、 幹細胞を増殖させることで1グラムの細胞から
無尽蔵に骨ができる。 しかも、 腸骨採取のように体を傷つける
ことがない。
具体的には患者さんの上顎洞や腸骨から採取した骨髄液から
血清で細胞を増やす。
マトリックスにはβ-TCPというセラミックス材料を使い、
血小板から分離した成長因子を混ぜてできた培養骨を、
インプラントの周囲に移植する。 そうするとインプラントの
先端部を覆うように骨形成が促される。
培養骨とインプラントを一緒に埋め込んで骨にくっつくのか
という疑問がわくと思うが、 半年ほどかければ十分に骨が
再生され機能する。
今や安全で多くの人のQOL向上につながる再生医療の時代に
突入したといっても過言ではないであろう。

原瀬 忠広



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