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特別寄稿② 心を聴く

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

 小学校6年生1学期の終わり頃、A子さんが不登校になり、カウンセリングを受けることになりました。彼女の訴えは、頭痛、腹痛など身体的な症状でした。数日前に「学校で机の中にゴミをたくさん入れられていた」と学校から帰って、A子さんからお母さんに訴えがあったそうです。お母さんはすぐに“いじめられている“と判断し、学校に行き先生に事情を話しました。お母さんとしては、学校でのいじめがなくなり、A子さんの身体症状を治して早く学校に行けるように問題解決しなければという思いがありました。先生もクラスのいじめを解決して早くA子さんが登校できるようにと働きかけられたのですが、彼女はそのクラスに戻ることはありませんでした。

このような事情でこられた場合、医師の診察で身体的異常がなければ、カウンセラーはまず、A子さんの気持ちに向き合って頭痛や腹痛のつらさや机の中にゴミが入っていてショックだったこと、またお母さんの不安な気持ちを受け止めながら”聴く“という関わりをしていきます。

A子さんの起こしている不登校、頭痛、腹痛の症状は心の深いところにある何か大切な問題なのかもしれないのです。カウンセラーはその問題に対して尊重したいものと考えているのです。それはその人が自分の力で取り組みながら大きく成長していくために必要あって表面に現れている症状かもしれないからです。

A子さんは、身体症状は取れても中学生になってしばらくは学校には行きませんでした。

お母さんも時間の流れの中で問題解決ではなく、A子さんの気持ちにゆっくり耳を傾け聴けるようになっていかれました。

彼女はその年の4月に転校してきたのですが、前の学校の楽しさや友人のことが忘れられなくて、今の学校で友人を作る気持ちになれず、すべてが受け容れられなくなり、やる気がなくなっていったこと、泣きたい気持ちも家族に心配をかけてはいけないと抑えてしまっていたことなどお母さんに語れるようになったのです。お母さんは人に心配や迷惑をかけないようにと小さい頃から何気なく言って聞かせていたことがA子さんの心を縛っていて、心からのコミュニケーションができなくなっていたことに気づかれたのです。

問題解決にとらわれ、一番大切な子どもの気持ちを見失ってしまうところでしたとお母さんも人の気持ちや自然に向き合う喜びをA子さんからプレゼントしてもらった思いをもたれたようでした。しばらくして大仕事を終えたかのようにA子さんは学校に復帰していきました。

{事例の場合:内容には個人が特定できないよう配慮した文になっています。}

                           

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代



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