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特別寄稿⑨子供への虐待

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

 

最近、子どもへの虐待への関心が高まっています。背景には、子どもの虐待の相談件数の増加や、育児に悩む母親の増加があります。

 児童相談所が全国統計を取り始めたのが1990年で、このときの相談件数が1100件でした。それが2005年には34000件と、この15年で30倍の増加になっています。虐待というと、身体的な暴力のみと考えられがちですが、他に性的虐待、ネグレクト、心理的虐待があげられています。

子どもの虐待は、子どもの共感性の欠如と攻撃的傾向とをもたらすので大きな問題となるのですが、その背景にある問題は虐待によって生じる愛着の不全があげられます。

 子どもが育っていくために、養育者との関係には愛着関係が大切であることは、発達心理に関わる人や医師など多くの人が提唱しています。子どもの愛着行動は、不安になったときに、母親が愛着者であれば、母親をじっと見つめ、母親から離れても絶えずそちらの方に目を向けます。また、何か不安になると泣き声を上げ母親に向かって泣き、関心を自分の方に向けようとします。後追いもその一つです。

愛着者である親は子どもの不安を静め、エネルギーを供給する安全基地といわれています。子どもは安全基地である親から離れ、探索行動をし、親のもとへ駆け寄り、胸やひざに抱きつき、顔をうずめるなどしばらく密着した後、再び親から離れて行動をするなど繰り返します。愛着者不在の緊張状態と、愛着者のいるリラックスした状態の繰り返しの中で、愛着者のイメージが子どもの心の中で保持されるようになり、愛着者がいなくても混乱しなくなって長い時間、愛着者から離れることができるようになるのです。

愛着障害によって心身の発達の著しい遅れ、さらには免疫機能の低下までが生じ、時として死に至ることさえあります。また、あいち小児保健医療センターで解離性障害と診断を受けた子どもの8割が、被虐待児であったと報告があります。解離とは、脳が目に見える気質的な傷を受けたわけではないのに、心身の統一が崩れて記憶や体験がばらばらになり、繰り返し受けたトラウマによっておきる精神症状です。

児童憲章には「すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される」と制定されています。虐待予防と子どもの健全な育ちのために、日赤で4年前から取り組みが始まった「胎児期から思春期まで一貫した子どもとその家族を医療・保健・心理の面から支援を行う」ことを目的にした成育医療センターは、子育ての新しい文化の創造といえると思います。

   参考文献    子ども虐待という第四の発達障害   学研

           育児、保育現場での発達とその支援  ミネルヴァ書房 



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