旅の思い出
横山 博幸
南加愛媛県人会の創立100周年を祝う式典が、2010年8月1日、本県から団長の加戸守行前知事、副団長の井上善一海外協会長らをはじめ県議会議員、八幡浜・今治の高校生ら94名が参加しロサンゼルスで盛大に挙行されました。
さらに訪問団は、サンフランシスコへも足を伸ばし、周辺に在住する県人との交流を深めました。最後の訪問地はポイント・アリーナでしたが、この地は80余年前の時代に、わずか15メートルの「打瀬舟」(うたせぶね)と呼ばれる小さな帆船に乗り込んだ、八幡浜の15名の勇気ある若者たちが、アメリカに夢を馳せ太平洋を横断し、58日目には15名全員がアメリカに無事に漂着し、大地を踏むという目的を果たした場所です。
またこの間、愛媛県出身者の企業、マルカイコーポレーションとヤマサ蒲鉾を訪問しました。資料に寄れば、明治37年~大正元年までに512人が渡航、大正初年時点で、在米愛媛県人総数は、小児もあわせて1470人に達したといい、飲食店や農業等の苦労の多い労働に従事しつつ、いつの日か自営業者となる日を夢見て苦闘したという。たった一度の人生への挑戦を忘れつつある現代人への教訓となる歴史が、ここにあるのではないでしょうか。
マルカイコーポレーションは、旧吉田町のご出身の松秀二郎氏が社長を務め、南カリフォルニアを中心に12店舗を持つ、日系3大スーパーのひとつであります。
松社長には、渡米後の苦労話と同時に、日本人としての誇りある話をお聞かせ戴き、感動の時間となりました。
また、ヤマサ蒲鉾の創業者は、旧三崎町のご出身の川名音一氏であり、社長は川名フランク氏という2世の方でした。
ここでは、メキシコ人を中心とした37人の従業員が、蒲鉾、巻き寿司用の海苔、ちくわ、乳酸菌飲料などの生産を主力にハワイを含む全米に、商品販売を行っております。
工場内を視察しながら、社長や幹部のお話をお聞きしましたが、私の「今までのご苦労は大変だったでしょう」との質問に、「とても言葉で表現できるようなものじゃないですよ」との回答が今でも耳に残っております。
こうして、愛媛県人のアメリカでの歴史に触れることができました。改めて日本人の勇気ある行動、成功までの絶え間なき努力、忘れる事なき恩人への感謝、「愛媛県人会創立100周年記念式典」と各地の訪問は、そんな想いの一杯詰まった感動の機会でもありました。