この一冊
山本 宗宏
和田 竜 『のぼうの城』
普段は本屋さんで目に留まったり話題になってる本を、寝る前や出張の移動中に読んでいる程度で、この1冊!って皆さんにお奨めできるような読書家じゃない私ですが、最近で特に面白かったのが昨年の本屋大賞二位にもなった『のぼうの城』という時代小説です。和田竜という作家のデビュー作で、直木賞候補にもなりました。
ときは戦国、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉は関東の雄・北条家の小田原城攻めに50万ともいわれた大軍を投じます。その小田原城の数ある支城のひとつである忍城(おしじょう)は、周囲を湖で取り囲まれた難攻不落の「浮城(うきしろ)」。その城代は、皆から“木偶の坊”と呼ばれながらも、なぜか領民の人心を掌握している成田長親という掴みどころのない人物。
秀吉方の大将石田三成率いる約2万3千の大軍に対して、忍城軍は僅か5百。さて“のぼう様”の秘策とは?「三成の忍城水攻め」として戦国史に残る壮絶な戦いが、いま始まる!とまあ、文庫本の帯に書くコメントならこんな感じでしょうか。
いっきに読み終えた後も、一歩間違えばただの馬鹿殿かとも思えるそのキャラクターの魅力的で不思議なリーダー像について考えることしきりでした。
因みにこの小説は野村萬斎の主演で映画化され、今年放映予定でしたが、水攻めのシーンが震災直後で生々しいというので、上映が来年に延期されたそうです。
この夏、冷えたビールと枝豆のお供に一冊(厳密にいうと上・下巻)如何でしょう。