この1冊
浅田次郎
「蒼穹の昴」シリーズ 和田 泰
「趣味は読書」と以前は胸を張って言えましたが、このところ、日々の雑用に追われ、進行する老眼もあいまって、活字を読むのがだんだん億劫になり、読書量が長期減少傾向にあります。唯一の読書機会が、2・3ヵ月に一度の東京出張の往復の飛行機とホテルでの就寝前の時間となっています。
ここ最近のお気に入りの作家は浅田次郎で、特に「蒼穹の昴」は、さすが作者自身が「この作品を書くために私は作家になった。」と言うだけあって、寝るのも忘れて、全1800枚を一気に読み切りました。
西太后と彼女に仕えた李春雲(春児:宦官)、春児の幼馴染の梁文秀(科挙の首席合格者(状元))を主人公に清朝末期を描いた物語は、文句なしに泣けます。個人的には、浅田作品の最高傑作だと思います。
この「蒼穹の昴」は、田中裕子(西太后役)主演でNHKドラマにもなりましたが、やはり原作の魅力にはかないません。
また、シリーズ作の「珍妃の井戸」、「中原の虹」、「マンチュリアン・リポート」も、多彩な登場人物と、斬新な切り口で、仕事そっちのけで次々と読み進めてしまいました。
一昨年から「坂の上の雲」で非常に盛り上がっている松山ですが、この「蒼穹の昴」シリーズは、時代的にも重なる部分が多く、両者を対比しながら読むのも面白いと思います。