日に五・六十人の高齢者男女の豚を診ている。
漢方でいう、いわゆる泳症なんだが私はもともと内科専門医ではない。
一寸知っていると云えば皮膚科、泌尿器科、漢方の一部ぐらいかなはじめの数日は無我夢中、看護師が上半身をはだけてくれる。
聴診器をあてて胸や背の音を聴く音はすれども大意を把握することは出来ない。
カルテと睨めっこし、その場を繕ういや参りました。
全く無能に近いのである。
世の中に社会貢献能力年令というのが存在し、自分はその耐用年数が切れかかっているのではないかと愕然としたことでありました。
自分の出来る事を原点に戻し、よくみること、さわること、嗅ぐこと、聞くこと、衰えつつある五感をフルに活動させ、相手の人の心身の全体像をつかむことに専念する。
毎日続けていると、季節、天候、朝夕により人によって徹妙に変化していることに気づく。
一般に老人は病にかかり易い。
抵抗力が若い人より体力ともに減退しているのだ。
俗にいう、免疫力が低下しているのだろう。
私は常に老人に接しているが、気づくことがある。
明日への希望とか、意欲にとほしいのだ。
彼等に極力会話することに努めている。
貝原益軒先生は、七十才で九州黒田藩を退職し、奥さんと全国漫遊のパスポートを貰い、動食物、薬品、喰べものに深い関心を持ち、そのつど多くの本を出版し江戸時代のベストセラーになっている。
当時日本人の平均寿命が五十才以下であったのに、彼は八十五才で没している。
晩年「楽しみを失わざれば、養生のもととなるべし」と云っている。
私も自由に楽しく自然と共生したく思っております。