表紙写真の解説
大宝寺本堂
古照山大宝寺は、西暦701年に国司の越智玉興(たまおき)によって創建されたといわれ、その時の年号を取って大宝寺と称しました。現在の本堂は、平安末期または鎌倉初期の創建とされ、平安期の弥陀堂形式を整えた県下最古の木造建築物で、国宝に指定されています。桁行(正面)3間、梁間(奥行)4間、本瓦葺き、寄棟造りの極めて簡素な造りで、中に安置されている阿弥陀如来坐像ほか、国の重要文化財の仏像3体も守る、まるで母親のおなかのような仏堂本来の姿を感じるとることができます。
境内で第二次大戦の戦火を免れたのは、この本堂と、前に茂る「うば桜」だけです。学名はエドヒガン、こちらは松山市の天然記念物に指定されています。小泉八雲の怪談にも掲載されているうば桜伝説は有名で、境内にこのほど乳母桜像が設けられました。これは平城遷都1300年祭のマスコットキャラクター「せんとくん」で話題を呼んだ彫刻家、薮内佐斗司氏の作品であります。
毎年、この桜が満開のころとなる3月28日には、御影供(みえく)の法要が営まれ(この日は乳母お袖の命日でもあります)、本堂の蔀戸(しとみど)が開け放たれ、10人を超える僧侶が一斉にお経を唱える様子はこの世のものとは思えないくらいで、荘厳な世界に導かれます。是非一度お訪ね下さい。
建築設計・監理,古建築調査・研究
花岡直樹建築事務所 一級建築士 花岡 直樹 氏