松山中央ライオンズクラブ
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2007年3月

No.448 小説「坊ちゃん」12景 その⑦

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『湯壷は花崗岩を畳み上げて、 十五畳敷位の広さに仕切っている。 大抵は十三、 四人漬かっているがたまには誰も居ない事がある。 深さは立って乳の辺りまであるから、 運動のために、 湯の中を泳ぐのはなかなか愉快だ』 やはり29歳の漱石は若い。 浴場に突然出現した 『湯の中で泳ぐべからず』 との貼り紙は、 明らかに坊ちゃんこと漱石のために貼られたものである。 翌日の学校の教室には例の如く黒板に 『湯の中で泳ぐべからず』 と書いてある。 天麩羅事件から始まって団子事件、 更に温泉での水泳事件と探偵されることの嫌いな漱石は、 ほとほと松山がいやになっている。 実を言うと漱石が松山へ来た理由の一つに探偵行為からの逃避という説がある。 もっとも探偵の存在は漱石の精神的病から来る妄想という説もあり何だかややこしい。 松山で中学生たちに見張られていたのは小説にあるように事実のようであるが…。 ところで道後温泉の湯の中で泳いでしまった漱石が、 いかに道後温泉を気に入っていたかを伺い知ることが出来る友人への手紙を紹介しておく。 『道後温泉は余程立派な建物にて、 八銭出すと三階に上り茶を飲み菓子を食い湯に入れば頭まで石鹸で洗ってくれるという様な始末。 随分結構に御座候』  湯に漬かった漱石の紅潮した顔が目に浮かぶようである。
山本 力雄 


No.447 小説「坊ちゃん」12景 その⑥

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先月号に小説の中の住田温泉こと道後温泉について書くべきであったかと思う。 何故なら坊ちゃんは団子を食べる前に温泉に入っているからである。 漱石は松山についてほとんど褒めなかった。 東京に比べすべてが田舎であり、 チマチマとしている。 人の心もその情景と同じように感じていたようだ。 ただ一つ漱石が褒めたのは道後温泉であった。 その道後温泉について以下のように表現している。 『おれはここへ来てから、 毎日住田の温泉へ行く事に極めている。 ほかの所は何を見ても東京の足元にも及ばないが温泉だけは立派なものだ。』 という訳で、 漱石は毎日のように道後温泉へ出かけた。 その頃漱石が道後温泉にいかに毎日通ったかは高浜虚子の書き残した文章の中に見える。 『私はしばしば漱石氏を訪問して一緒に道後の温泉にいったり、 俳句を作ったりした。』 『私が障子をあけて下をのぞくとそこに西洋手拭いをさげている漱石氏がたっていて、 また道後温泉に行かんかと言った。』 という具合で子規を通じて知り合った虚子を誘い毎日のように道後温泉へ出かけている。 そのお褒めにあずかった道後温泉本館がいつ現在のような形に完成したのかを調べてみると、 道後湯之町議会が本館はじめ全建物の改築を決議したのが明治24年であり、 27年に落成している。 すなわち漱石が松山へ来る一年前のことであった。

山本 力雄


No.446 小説「坊ちゃん」12景 その⑤

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坊ちゃんこと夏目先生は、 松山市内を散歩していて蕎麦屋を発見する。 東京時代から蕎麦が大好物であった。 蕎麦屋に入り、 天麩羅蕎麦を注文する。 その旨さのあまり4杯も平らげた。 ところが翌日教場へ出ると黒板一杯に 『天麩羅先生』 と書いてある。 次の教場では 『一つ天麩羅四杯也』。 次は 『天麩羅を食うと減らず口が利きたくなるものなり』 とある。 別の日に住田こと道後温泉近くの団子屋で団子を食べると、 『団子二皿七銭』 と書いてある。 次の教場では、 『遊郭の団子旨い旨い』 とある。 さすがの江戸っ子先生も中学生のしつこい悪戯に閉口している。 ところで先日この遊郭の団子屋と称する場所へ行ってみた。 団子屋は今はない。 あっただろうと思われる場所から、 緩やかな坂を望むと一番上に一遍上人の生誕地といわれる宝厳寺の山門が見える。 その山門までの坂の両脇は、 そもそもネオン坂という歓楽街があった。 その歓楽街の歴史を紐解いてみると、 遠い昔は一遍上人巡礼の信者によってつくられた門前町であり、 時を経て明治の始め頃、 遊女をおく置屋街となった。 恐らく明治28年頃のネオン坂 (旧称松ヶ枝町) はたいした繁盛振りではなかったか。 それにしても、 後に歴史に残る文豪となる28歳の漱石が、 温泉地の色里を眺めながら団子を食べている。 なんとも愉快な情景ではないか。
色里を 十歩はなれて 秋の風   子 規  漱石と子規が道後辺りを散策した時の句である。
山本 力雄


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