松山中央ライオンズクラブ
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2008年12月

特別寄稿④ 一人の心を理解し対応するために

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

松山赤十字病院成育医療センター小児科では、8月に小児心身医療懇話会10周年記念行事を行い、当日たくさんの方の参加を頂き開催することができました。不登校や心身症、摂食障害など心身医療を求めて来院する子どもたちの人数がうなぎのぼりに増え続け対応に追われていた頃、病院だけで抱え込むのではなく、外部機関とのつながりを持ち、子どもの心の叫びへの理解を深め、それぞれの現場で何ができるかを語り合う会として10年前に発足し隔月開催で継続しています。

心身医療において基本的な姿勢として“一人の子どもを理解し、その子どもに適した対応をする“ことを大切にしています。学校は集団生活の場であり多くの経験が得られる場でもありながら、子どもによってまた対応によっては”個“を見失いがちな場でもあります。自分らしさが感じられなくなったとき、「心を病む」結果につながりやすいように思います。子どもは集団の場でもほんの少し、“個”としての関わりが持たれることで自分が自分であることを肯定的に受け止め、感情を取り戻すことができて生き生きし、意欲的になるのです。共通理解をするためには各機関との連携は欠かせません。

昨今、軽度発達障害という文字を目にされることも多いと思いますが、学校生活はできているが、パニックを繰り返したり、落ち着きがなく集中できない子どもとして注意や叱責されることが多く、混乱がひどくなっている場合があります。個性に特徴のある子どもに対しては“ひとりを理解し、ひとりへの対応を大切にする”ことがより重要になります。      そのために、その子を取り巻く人々、毎日関わりを持つ先生とのコミュニケーションをとるために成育医療カンファレンス(学校連携)をおこない、保護者、学校(管理職、担任、保健などの先生)と医療が一人の子どものことで向き合う機会をとっています。

人とのコミュニケーションが取りにくかったり、回りの刺激をより分けなく、休むことなく受けてその処理に追われ、時には混乱していて満足感や充実感を味わう暇もない時間を過ごしているとしたら、「生きづらさ」があって、まわりの人の理解なくては過ごせません。それを「治す」という発想ではますますその人を追い詰め攻撃性を助長することになったり、無力感を持たせたり、悪循環が起こります。その子の困難さに理解を深めその子にふさわしい回りの対応を話し合うのが学校連携です。

今、大人の中にもその困難さの中で社会生活をしている人は多く、まわりの理解が得られないまま二次的な症状として鬱や心身症として苦しんでいる方も多いと考えられます。人間の脳は一定の認知だけではなく認識の違いがあり、個性があることを知り、常識にとらわれるのではない人間の見方も大事と子どもは発信しているように思います。

松山赤十字病院小児科カウンセラー
 えひめ親子・人間関係研究所

 臨床発達心理士

     平林 茂代


特別寄稿③ 成育医療における傾聴ボランティア活動

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

昨今、 子どもの出生率の低下が進み日本の国の将来にも影響することが懸念され、 さまざまな取り組みが実践されています。 子育て支援事業もその一つで国や企業など幅広くさまざまな形で展開されています。
 私が勤務している松山赤十字病院でも小児科と産婦人科が統合して成育医療センターが、 平成16年7月1日に開設されました。 「胎児期から思春期まで一貫して子どもとその家族を医療、 保健、 心理の面から支援を行う。」 ことを目的にしており、 妊娠、 胎児から出生、 小児、 思春期を経て成人への発達というサイクルにかかわる医療を総合的かつ継続的に診ていくという新しい概念の医療としてスタートしました。
 成育医療において子育て支援は、 赤ちゃんがお母さんのお腹の中に生まれたときから始まると考え、 妊娠中から何でも相談でき、 対応してくれる場があり、 社会から護られている 「安心」 を提供することから始まります。
 成育医療の中に成育医療ボランティアセンターが開設されたのが翌年の4月でした。 そこには管理ボランティア2名とカウンセリング実践講座で4年間学んだボランティアの方26名が傾聴ボランティア、 保育ボランティア、 SSTボランティアとして活動を開始しました。 現在では83名の方がボランティアとして登録、 活動しています。
 傾聴ボランティアは、 何よりも赤ちゃん誕生の喜びを母親、 またご家族と共有することを大切にしています。 産後の退院時のひととき新米お母さんに耳を傾けます。 あふれるような喜びが伝わってきます。 退院後、 1~3か月の乳児健診での来院時にはボランティアさんが母親に心を傾け、 赤ちゃんの成長を喜ぶとともに、 心配なことなど傾聴し、 成育診療医に伝える役目もしています。 待合でのほんのひとときのかかわりなのですが、 思わず話が弾んでみたり、 ちょっとした不安を語られたり、 お母さんたちから頂くアンケートでも聴いてもらってよかったという思いをたくさんいただきます。 またボランティアさんも傾聴ボランティアを実践することがけっして相手のためではなく、 いろいろ話を聞かせてもらうことで自己価値観を感じさせてもらうことができ、 豊かな気持ちになると継続意欲につながっています。
 一方で、 妊娠初期からの不安を訴える方も少なくなく、 出産までをカウンセラーでもある管理ボランティアが継続的に心を傾け聴いていきます。 具体的な支援が必要であり、 母親や家族が希望される場合は成育診療医を通して保健所や子育て支援センターなどその他の機関との連携を行い、 継続的な支援ができる様につないでいきます。
 成育医療における院内外との連携やボランティア活動を通して人と人とがつながることはお互いの育ちあいにつながっていることを感じることができます。

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代


特別寄稿② 心を聴く

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

 小学校6年生1学期の終わり頃、A子さんが不登校になり、カウンセリングを受けることになりました。彼女の訴えは、頭痛、腹痛など身体的な症状でした。数日前に「学校で机の中にゴミをたくさん入れられていた」と学校から帰って、A子さんからお母さんに訴えがあったそうです。お母さんはすぐに“いじめられている“と判断し、学校に行き先生に事情を話しました。お母さんとしては、学校でのいじめがなくなり、A子さんの身体症状を治して早く学校に行けるように問題解決しなければという思いがありました。先生もクラスのいじめを解決して早くA子さんが登校できるようにと働きかけられたのですが、彼女はそのクラスに戻ることはありませんでした。

このような事情でこられた場合、医師の診察で身体的異常がなければ、カウンセラーはまず、A子さんの気持ちに向き合って頭痛や腹痛のつらさや机の中にゴミが入っていてショックだったこと、またお母さんの不安な気持ちを受け止めながら”聴く“という関わりをしていきます。

A子さんの起こしている不登校、頭痛、腹痛の症状は心の深いところにある何か大切な問題なのかもしれないのです。カウンセラーはその問題に対して尊重したいものと考えているのです。それはその人が自分の力で取り組みながら大きく成長していくために必要あって表面に現れている症状かもしれないからです。

A子さんは、身体症状は取れても中学生になってしばらくは学校には行きませんでした。

お母さんも時間の流れの中で問題解決ではなく、A子さんの気持ちにゆっくり耳を傾け聴けるようになっていかれました。

彼女はその年の4月に転校してきたのですが、前の学校の楽しさや友人のことが忘れられなくて、今の学校で友人を作る気持ちになれず、すべてが受け容れられなくなり、やる気がなくなっていったこと、泣きたい気持ちも家族に心配をかけてはいけないと抑えてしまっていたことなどお母さんに語れるようになったのです。お母さんは人に心配や迷惑をかけないようにと小さい頃から何気なく言って聞かせていたことがA子さんの心を縛っていて、心からのコミュニケーションができなくなっていたことに気づかれたのです。

問題解決にとらわれ、一番大切な子どもの気持ちを見失ってしまうところでしたとお母さんも人の気持ちや自然に向き合う喜びをA子さんからプレゼントしてもらった思いをもたれたようでした。しばらくして大仕事を終えたかのようにA子さんは学校に復帰していきました。

{事例の場合:内容には個人が特定できないよう配慮した文になっています。}

                           

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代


特別寄稿①カウンセリングのこころ

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

カウンセリングのこころ

 カウンセリング・マインドという言葉がある。日本人の造語だそうであるが、日常の生活の中で“カウンセリングのこころ”を活用することといえる。

カウンセリングでは、人は生涯を通して発達しようとする存在であり、自己実現する力、統合する力、問題解決する力が備わっているという人間信頼が前提にある。すなわち人は幸せ感、充実感を求め目指す力、外界からの刺激や内的感情を統合する力が常にはたらき、問題が起こるとそれを解決しようとする力が働くのである。

したがってカウンセラーは個人が援助を求めて相談にこられたとき、問題解決をしてあげるのではなく、安心できる場を構成し、自由な表現をすることができ、否定的な感情や肯定的な感情を受け止めることでその個人が、本来持っている力が発揮できて望ましい状態に至る、その成長のプロセスにかかわりをもっていくのである。

そのプロセスの中でカウンセラーの大切な条件として、カウンセラー自身の自己理解は当然であり、相談にこられた方への積極的関心、適切な距離、中立的存在、自然で受容的・共感的能力及び態度が求められる。また相手との信頼関係を形成し、影響力を高めるためにはコミュニケーション技能を持つことも大切な条件である。

“カウンセリングのこころ“を日常生活で活かすことは、人間関係を大事にする姿勢であるといえる。家庭や職場、地域が安心できる場であり、所属意識を持つことができ、成就感が得られてこそ信頼関係ができ、人格と人格がふれあい、人と人との育ちあいが生まれるのではないだろうか。また、一方通行のコミュニケーションではなく、双方が理解しあえるコミュニケーションが大切である。

”相手の心を聴く”カウンセラー養成では重要な訓練のひとつである。

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代


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