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2009年5月

特別寄稿⑨子供への虐待

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

 

最近、子どもへの虐待への関心が高まっています。背景には、子どもの虐待の相談件数の増加や、育児に悩む母親の増加があります。

 児童相談所が全国統計を取り始めたのが1990年で、このときの相談件数が1100件でした。それが2005年には34000件と、この15年で30倍の増加になっています。虐待というと、身体的な暴力のみと考えられがちですが、他に性的虐待、ネグレクト、心理的虐待があげられています。

子どもの虐待は、子どもの共感性の欠如と攻撃的傾向とをもたらすので大きな問題となるのですが、その背景にある問題は虐待によって生じる愛着の不全があげられます。

 子どもが育っていくために、養育者との関係には愛着関係が大切であることは、発達心理に関わる人や医師など多くの人が提唱しています。子どもの愛着行動は、不安になったときに、母親が愛着者であれば、母親をじっと見つめ、母親から離れても絶えずそちらの方に目を向けます。また、何か不安になると泣き声を上げ母親に向かって泣き、関心を自分の方に向けようとします。後追いもその一つです。

愛着者である親は子どもの不安を静め、エネルギーを供給する安全基地といわれています。子どもは安全基地である親から離れ、探索行動をし、親のもとへ駆け寄り、胸やひざに抱きつき、顔をうずめるなどしばらく密着した後、再び親から離れて行動をするなど繰り返します。愛着者不在の緊張状態と、愛着者のいるリラックスした状態の繰り返しの中で、愛着者のイメージが子どもの心の中で保持されるようになり、愛着者がいなくても混乱しなくなって長い時間、愛着者から離れることができるようになるのです。

愛着障害によって心身の発達の著しい遅れ、さらには免疫機能の低下までが生じ、時として死に至ることさえあります。また、あいち小児保健医療センターで解離性障害と診断を受けた子どもの8割が、被虐待児であったと報告があります。解離とは、脳が目に見える気質的な傷を受けたわけではないのに、心身の統一が崩れて記憶や体験がばらばらになり、繰り返し受けたトラウマによっておきる精神症状です。

児童憲章には「すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される」と制定されています。虐待予防と子どもの健全な育ちのために、日赤で4年前から取り組みが始まった「胎児期から思春期まで一貫した子どもとその家族を医療・保健・心理の面から支援を行う」ことを目的にした成育医療センターは、子育ての新しい文化の創造といえると思います。

   参考文献    子ども虐待という第四の発達障害   学研

           育児、保育現場での発達とその支援  ミネルヴァ書房 


特別寄稿⑧認知行動療法2

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

認知行動療法2

 先日、NHKの番組で“うつ病“が取り上げられ、イギリスなどではうつ病の治療や予防には心理士の仕事が制度化され、認知行動療法に多大な予算が組まれていることが報じられていました。日本では、心理士が国家資格として制度化されていないため認知行動療法や特別な心理療法を受けるためには個人負担が多くなり、まだまだ一般的とはいえないのが現状のようです。

 人は幼い頃、否定的な体験が多いと、重要な出来事が起こったときに否定的な思い込みを導き出し、その後も何が起こるかと否定的な予測を持って過ごします。その後の出来事に対しての反応も否定的な思考パターンが生じるようになり、新しいことを避ける、消極的な行動、そして気持ちも緊張や寂しさ、イライラといった感情を生み出してしまうのです。その思考パターンは循環して強化され、欝や心身症を発症しやすい状態といえます。

 認知行動療法では否定的な思い込みを肯定的なものに変化させ、積極的な行動や安心感を持ち冷静で幸福感がもてるような感情に循環を強化させていこうとするアプローチです。

 一般的なカウンセリングではクライアントが自由に語りながらそれをカウンセラーは傾聴、受容、共感的理解をして、クライアントとの関わりのプロセスに焦点をあてクライアント自身が問題解決をしていくのを援助していくという姿勢なのですが、勿論この姿勢は信頼関係を築いていくために基本的に大切と考えています。

 認知行動療法では、カウンセラーとクライアントが信頼関係を通じて「今、ここの問題」に焦点を当て問題を解決していくためのチームメンバーとしてカウンセラーとクライアントが協同で取り組んでいきます。カウンセラーはクライアントが具体的に思考していきやすいように適度に制約のある質問、「その時何が起きていたのですか?」「この一週間どんな気分になることが多かったですか?」などと聞いていきます。その中でクライアントの抱えている問題、おかれている状況、その経過と現状を全体的にとらえ、うつ病の人に対してはうつ病について伝えたり、その人の今の状態に合わせた説明をし、わかりやすいように教育的コミュニケーションをとっていきます。

クライアントの認知を正したり、修正するのではなく、その人の課題については十分なブレーンストーミング(評価をしないでたくさんの解決案を出す)を重ね認知の“幅を広げ、柔軟性を高める”ことが目的であるといえます。

激しく変化していく日本の社会環境の中で価値観の違いや人生観の違うもの同士が共存し、人間関係をとっていくためには、時に認知の棚卸をしてみることも豊かさにつながることかなと思います。


特別寄稿⑦認知行動療法1

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

認知行動療法1

 認知行動療法は、比較的新しい心理療法ですが、専門家や一般の方の間でも興味や関心が高まってきているといえます。わたし自身も心理療法家として患者さんの話を聴きながら、患者さん自身が自分の気持ちを整理しながら問題解決をしていかれるプロセス思考的なかかわりをしていく場合と認知行動療法のような解決思考的な関わりをしていく場合があります。

認知行動療法は子どもや若者の場合で見ていくと、その子どもや若者が、不適切な考え方をすることで不快な感情が引き起こされ、それが行動に影響を与えるとされていると考えます。 したがって、子ども・若者が自分自身の不適切な考え方を見つけ出し、それを改善して、新しい対処のしかたを試してみるように促し、その考え方を変えるのを援助するよう介入していきます。考え方を変えることができれば、感情や行動を改善することができ、抑うつ、不安、恐怖症、強迫性障害、PTSDなどの心理問題も解決しやすくなるのです。

 認知行動療法では、“感情と行動は、主に認知の結果生み出されるものである”とみなされています。そこで”認知と行動に介入することによって、認知、感情、行動に、変化をもたらすことができる“という理論が基本的な前提になっています。

認知(何を考えるか)、感情(どう感じるか)、行動(何をするか)の3つの関係を問題とします。「自分は話すことが苦手だ」と考えている人は、「友達と一緒にいるときうまく話せるか」を心配な感情を持ち、友達に話しかけないという行動をとってしまいます。この人は、認知によって感情、行動の循環を繰り返し、その「話すことが苦手」というパターンを強化していく結果になっていきます。この認知、感情、行動の3つの循環を「魔法の環」と呼びます。

そこでまず、認知プロセスに注目をします。幼児期からの経験によって中核的な思い込みが作りだされると考えられています。その後、重要な出来事によって誘発され、活性化され、導き出され、自動思考(パッと頭に浮かんでくる考え)が出現してくるのです。

「私は成功しなければならない」という中核的思い込みは、試験を受けなければならない重要な出来事に対して「一日中勉強しなければ、良い点を取ることができない」と先入見が導き出され、「努力が足りない」(行動に関するもの)、「自分はおろかな人間」(人物に関するもの)、「試験にパスすることができず、大学には行けない」(将来に関するもの)などの自動思考が出現して過度の勉強、不安、不眠など精神的、身体的な変化が起きてきます。 

 次回、認知行動療法についての具体的な方法について述べたいと思います。

    参考文献  子どもと若者のための認知行動療法ワークブック(金剛出版)

          認知療法・行動療法カウンセリング (聖和書店)

          認知行動療法入門(金剛出版) 

臨床発達心理士

  平林 茂代


特別寄稿⑥自己表現

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

自己表現

 「目標をもって生きる」書店に並んでいる自己啓発の書籍にはよく主張されている言葉です。どのようになりたいのか、どこに向かって往きたいのかを時々確かめながらクライエントさんと向き合っていくことはカウンセリングでも大切にしていることです。混乱から抜け、進んで往く道筋が見えやすくなるからです。

 「目標はどんなに大きく持ってもよい、今実現は難しくとも星空の北斗七星にその希望を預けておくと見失いそうになったとき方角を示してくれる。まず見えるところの電信柱の目標から取り組んでいこう。」という言葉はあるセラピストの表現なのですが、未来を否定的に観るのではなく進む道を照らしてくれる光としておいておく姿勢は大切にしたいと思います。自分の目標を実現していこうとするとき、自分だけではできないことも多く、協力を求める必要もあり、人間関係が重要になります。アメリカの心理学者は人間関係の持ち方には三つのタイプがあると述べています。

第一のタイプは、気持ちや欲求を他の人に伝えず、大切な欲求を満たすための行動を起こさない人で他の人が言ったりしたりすることにどう反応すればよいのかに時間とエネルギーを費やし、自分の欲求よりも他者の欲求を優先してしまうひっこみ型です。自分の欲求を満たすことができず、いつも不満がたまってしまいがちです。

 第二のタイプは、自分の感情や意見や欲求をはっきり伝えるのですが、そのやり方が相手をやっつけたり無視したり、傷つけたりするので人間関係では良い関係が保ちにくく自分の欲求を満たすために他の人の協力を得ることが難しくなる攻撃型です。

 第三のタイプは、自分の感情や欲求、考えを表明し、自分の権利をはっきり主張しますが、相手の権利や欲求を侵害することはありません。思いやりがあり、気持ちと行動が一致していて直接的で正直な人です。自分の欲求を自発的に満たそうとします。そして必要なときには、相手の意見も聞き協力を求める率直型です。

第一・第二のタイプの人間関係ではリスクが多く、自分の本当の欲求が満たされず、いつも不満を持つことになってしまいます。他の人の協力を得ることも難しくなります。

第三のタイプは率直な自己表現をして理解を求め、相手への理解も大切にして信頼関係が築かれ、廻りの人の協力が得られ自己実現への道が開かれていくのです。全くリスクがないわけではありませんが、自分自身の欲求、意見、考えを深く見つめ、自分と親しくなれること、また他者からのフィードバックも得られ、新しい自分の発見にもつながります。自己表現は、「私は」を主語にして相手に自分ことを伝えます。       

平林 茂代

参考文献  自己実現のための人間関係講座:近藤知恵著(大和書房)


特別寄稿⑤自己実現とコミュニケーション

松山赤十字病院小児科カウンセラー
えひめ親子・人間関係研究所

臨床発達心理士

  平林 茂代

自己実現とコミュニケーション

自己実現という言葉があります。広辞苑では「自分の中にひそむ可能性を自分で見つけ、十分に発揮していくこと。またそれへの欲求」とあります。

アメリカの人間性心理学者であるマズローという人は、自己実現について研究し、人間行動の動機には欠乏欲求と成長欲求があることを提唱しました。前者は食、性、排泄、睡眠、休息などへの生理的欲求、および安全、所属、愛情、尊敬などへの社会的欲求であり、後者の成長欲求はその欠乏欲求が満たされて初めて活性化すると述べています。自己実現は成長欲求に関係付けられ、自己一致、自己受容、自己肯定感が得られ自らの持っている能力を発揮して目標や使命を達成していこうとする欲求といえ、それは高次の自己実現欲求にもつながっていくと考えられています。

世界中を見渡すと生理的欲求や安全も満たされず、欠乏を満たすために24時間を費やされてしまう生活もまだまだ数多くあります。日本での私たちの生活の中では国の制度や共同体の働きなどで生理的欲求は基本的に満たされているといってよいと思います。

昨今、安全を脅かされるニュースがありますが、安全も基本的には満たされているといえます。所属、愛情、尊敬などの社会的欲求はどうでしょうか。

病院での心身医療にかかわりながら、「自分が何者かわからない」「働く意欲がもてない」「何のための勉強か意味が感じられない」「居場所がない」と訴える子どもや若者が多い現実と直面しながらマズローのいう社会的欲求の充足が課題であることを痛感します。

子どもや若者の心を通して家族や社会を見ると、日本の社会の急速な変化の中で、戦前、戦中、戦後、その後、経済が豊かな時代の人たちと何階層にも折り重なって人々が暮らしている社会で、一人一人の価値観や人生観の違い、また生活形態もそれぞれ違ってきています。それだけに社会的欲求である人間関係、すなわちコミュニケーションの問題は意識的な取り組みが求められると思います。

集団生活の中でお互いに助け合い、表現しなくてもわかりあえると信じて育ってきた世代の私ですが、社会に出て自分自身が見えなくなり、悩んできた一人です。「個人が自分の欲求を満たしていく責任は自分にあると自覚を持ち主体的な生き方をしていく姿勢が重要」と思ってからが自分の人生を生きているという実感が持てるようになりました。自分の感情や欲求に気づき、「自己表現」して周りの理解や協力を求めていく力こそ自分に責任を取っていく生き方につながると考えます。

参考文献:臨床心理学大辞典・広辞苑・自己実現のための人間関係(大和書房)


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